STAOFJAPAN 技術紹介

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超撥水
コーティング

型番とサンプル動画

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【1】 品番

代表的なB2C向けの品番を紹介します。
含浸型は織物、紙、木材、コンクリート、瓦など水が浸み込む基材に適し、超撥水化剤が含浸した後乾燥することで基材を超撥水化します。Phobicon6x系はそのような吸水性基材に用いることで擦れに強い超撥水性を発現出来ます。
  一方Phobicon8x系はそれら吸水性基材に加えてガラス、プラスチック、金属板など水が浸み込まない基材に対しても表面に被膜を形成することで超撥水性を発現します。
  Phobicon62及びPhobicon87はフッ素系である為、現在は供給を停止しています。

B2C向け品番 フッ素 タイプ
Phobicon60 非フッ素系 含浸型
Phobicon62 フッ素系 含浸型
Phobicon80 非フッ素系 被膜型
Phobicon87 フッ素系 被膜型

【2】含浸型超撥水化剤 Phobicon6x サンプル動画

コンクリート

コンクリート壁に塗布しています。
本来はコンクリート表面を洗浄してから塗工すべきなのですが、今回は省略しています。
スプレーノズルの具合が悪く均一の塗布が出来ていませんがブラッシングにより馴らしています。
ブラッシングはPhobicon6xシリーズ特有の工程であり、基材にPhobicon6xの成分を刷り込むようなイメージです。基材によっては必ずしも必須ではありませんが品質の安定性の為に推奨します。
元々Phobicon6xシリーズは乾燥すれば直ちに超撥水化します。ブラッシング工程は乾燥前でも乾燥後でも任意です。全ての工程を含めても極めて短時間で超撥水が得られます。

コンクリート

表面が平滑ではない素材の一つとしてコンクリートブロックです。
表面の凹凸があるため、小さい水滴は窪みに捉えられて転がらないことはありますが、コンクリート内には浸透しません。 むしろ技術的には平滑な表面の素材よりも超撥水化させ易いです。
ただ、塗液がコンクリート内に吸われるので平滑な素材よりも面積当たりの塗料の必要量が大きくなります。
コンクリートの耐酸性雨性向上や海水飛沫による劣化、防汚などに役立つと思います。
右の写真はイメージです。

外壁

コンクリートと類似した用途ですが、美観目的です。
色にこだわる場合は難しいですが(着色は可能)、白い外壁の場合はより白く見せる事が出来ます。病院など清潔感を強調したい建物にも向いていると思います。
防カビ・防コケなど水気を好む微生物などに対しても効果がありそうです。
※ 右の写真はイメージ画像です。

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ベランダ (1)

水平なはずですが水滴がゆるゆると動くのが見えました。建物の施工チェックに使えるかも知れません(笑)。
風が吹けば水滴はさーっと動きます。エアホッケーのような感じです。
ただし、本来はベランダは望ましい用途ではありません。頻繁に住民が踏みしめるとナノ構造が壊れ超撥水性が失われます。 これはあくまで実験です。

※このビデオで用いた超撥水コートは旧品番で、現行品よりも白みが強いです。

ベランダ (2)

同じくベランダです。 豪雨をイメージして大量の水を流してみました。
通常の撥水材料よりも水が表面に残りません。

日傘

麻製の日傘に塗布しています。日傘なので開口部のあるメッシュ構造です。一応撥水加工しているようですが水が浸み込みます。
右の動画はスプレー塗布後のブラッシングの様子です。
Phobicon6xシリーズではこのブラッシングによって塗膜の品質が向上します。

最初に水を掛けた部分はPhobicon62を塗布していません。向かってその左3つの区画に塗布しています。
孔の開いた生地なのでPhobicon62を塗布しても暴風雨のようなジェット水流の場合は裏に水が若干抜けます。しかし通常の雨ならば傘表面は水滴の無い状態が保たれます。

傘生地の折り目に水滴が付いているように見えます。
しかし水滴は引っ掛かっているだけで浸み込んでいません。少し傘を傾けたり衝撃を与えるだけで水滴は飛びます。

よく雨天に外から建物内に入ると傘を振って水切りしますが、超撥水コートがあればその必要はありません。折り畳み傘ならそのまますぐにバッグに入れることも可能です。 実は建物や店の入り口に置いてある使い捨て傘袋は海洋汚染になっているマイクロプラスチックの一因です。
ただ、デザイン重視の高級な傘には使用しない方が良いです。白を混ぜたような色合いになります。 ビニル傘でもいいですが、布製の傘の方が耐久性に優れます。傘は雨が上がると丸めたり畳みますが、ビニル傘だとその際に擦れが出ます。 布製は布の繊維が保護してくれますので何度も折りたたんだりしても使えます。
1本の傘に使う超撥水コート材は60-100g程度です。
右の動画はコーティング剤よりもコーティングを施した傘のプロモーションです。 しかし消費者が自分で塗布しても本動画に近い性能が得られると思います。

段ボール箱

段ボール箱の向かって右半分に塗布しています。
通常面は水が浸み込みますが塗布面は完璧に水を弾きます。

シューズ

シューズの色が白いので見えにくいと思いますが、向かって左は塗装無し、向かって右にPhobicon62を塗布しています。
シューズの網目が大きいのでブラッシングが難しく網目の底の方はブラシが届きません。
それでも通常のシューズは水が浸み込みますがPhobicon62を塗布した方は水を弾きます。

シューズ

スポーツシューズです。
オレンジ色の方に施工してあります。
元が鮮やかな色のせいか超撥水コートの曇りが気になりません。

綿のシャツ

コットンTシャツです。

木材

Phobicon60/60EはPhobicon80系同様フッ素フリーです。
60の溶剤は消防法非危険物になる水・アルコール系ですが60Eはアルコール系であり消防法の危険物に該当しています。 しかし80L未満の場合は貯蔵・取扱に関する 届出は不要です。
Phobicon60系は含浸型の超撥水化剤であり、いわゆるコーティング剤とは少し異なります。
吸水性のある木材やコンクリート、紙、繊維系、石材などに使用出来ますが、金属やガラスなど緻密で吸水しない基材には不向きです。
しかし基材内部に浸透して機能する為、超撥水剤の問題点とされる耐擦過性をあまり気にしません。 擦り強度は基材のもつ強度に準じます。
ここでは木材に対して使用しています。Phobicon60系は最終的に燃やしても二酸化炭素、水、シリカになりますので Phobicon60系が含浸した木材の廃棄処理も比較的簡単です。
Phobicon60系はクレオソート油、CCA、AAC、ACQ、CUAZなどのような木材防腐剤としての作用はありませんが、 木材が水を吸わなければ木材腐朽菌の繁殖条件を満たしにくくなり、木材の保存性が高まると思います。 (木材腐朽菌の急速な繁殖条件の一つが木材含水率30%以上です。)

木材

木材にPhobicon62を塗布しています。
手元側(画面では右の方)は塗布していません。水を掛けると塗れます。
手元から遠い方には塗布している為水が弾かれます。小さい傾き角度でも水は高速で転がる為確認が困難なくらいです。

超撥水コート剤は耐擦過性に乏しいと言われますが、この木材を紙でゴシゴシ摩擦しても性能は影響を受けません。

Phobicon62を用いて超撥水化処理を行った木材に粘土を押し付けてみました。
写真の左側は無垢の木材で、粘土の一部が木材に付着しています。
写真の右側が超撥水化した杉材ですが強く粘土を押し付けても容易に剥がれます。油紙に粘着テープが粘着できないような感触です。

石材

石材の種類は非常に多くあるようですが、その中で代表的なものとして堆積岩から砂岩(サンドストーン)、火成岩から過花崗岩と御影石(御影石は花崗岩に分類されますがここでは別に取り扱いました)、変成岩から大理石を選んで試験しています。
石材によって超撥水化の難易度が変わるので、使用した材料にはPhobicon87、Phobicon62が混在しています。
Phobicon62など6x系は正確にはコーティング剤ではありません。基材に含侵させて超撥水化させます。上手い言い方が無いので動画の中では「(含浸型)超撥水化剤」と言う表現を用いています。
含浸型は主として吸水性のある基材に対して有効です。塗布し乾布などで刷り込むことで即時超撥水性が発現します。
石材も実は吸水性がありPhobicon87だけではなくPhobicon62が有効な場合もあります。

Phobicon80を紙や布に塗布すると水は全く吸水しないが油をよく吸う選択的吸収シートになります。
右の動画では前半は色付けした水に塗布された紙を浮かべ全く塗れないことを確認した後、水面に調理油を垂らし、塗布された紙が水の上の油だけを吸う様子が見れます。
海面上に流出した油の回収や湖沼の水質改善等の用途が考えられます。

【3】被膜型超撥水コーティング剤 Phobicon8x サンプル動画

回路基板 (1)

PCのマザーボードに塗布しています。
電子用途はハロゲンフリーが原則です。フッ素は例外扱いされることが多くありますがやはりフッ素フリーの方が好まれるでしょう。Phobicon80はフッ素フリーなのでこの用途に適しています。
優れた超撥水膜の上では水滴がプラスチックの玉のような挙動をします」。
デスクトップPCでは超撥水コートは必要ないかも知れませんが、対象はノートPCです。ノートPCのキーボードの下にはマザーボードがあり、うっかりお茶などをこぼすとノートPCは終わります。その危険防止です。
ODU(Outdoor Unit)など屋外の電子機器にも使えると思います。

回路基板 (2)

同じく回路基板です。
電子機器を水中に落としたら?のシミュレーションとして塗工されたマザーボードを水に浸してます。
1日くらいなら浸していても引き上げると表面に湿気はありません。ショートも起きないと思います。

回路基板 (3)

試験用のLEDを実装した回路基板に超撥水コートし、水に漬けています。
防水性が悪ければ短絡を起こしLEDは消灯しますが、24時間以上LEDは点灯し続けました。

各種平板

ほとんどの動画で同じことなのですが、素材の傾斜が小さくても超撥水コート上では水滴は高速で転がるので非常に視認しにくいです。 その為、このビデオではやや赤い色をつけた水を使用していますが、それでも目で追うのは困難かも知れません。
使用した素材はガラス、瓦、ブリキ板、真鍮板、塗装鋼板、木材、PPC用紙の7種です。
それぞれ向かって右側が塗装面です。

PETフィルム

PETのようなフィルムにも塗工出来るのか?という疑問にお答えしてコートしてみました。
スプレーではなくナイフコートという塗り方をしてます。簡単に言うとカッターナイフの刃で塗りつけてます。 特に問題なく塗布出来ています。
どちらかというと平滑面のカテゴリーです。

※このビデオで用いた超撥水コートは旧品番で、現行品よりも白みが強いです。

ガラスシャーレ

Phobicon80EはPhobicon80同様フッ素フリーです。
ただし溶剤がアルコール系であり消防法の危険物に該当しています。その為貯蔵や輸送に制限がかかります。
どちらかというとB2B向けの型番ですが、金属製エアゾール缶であればB2Cでの輸送は可能なようです。 溶剤組成による取り扱いの制約が発生しますがそれと引き換えにかなり透明性の高い塗膜が得られます。
いくつかの用途が考えられますが、フッ素フリー+高透明超撥水塗膜ということで浮遊培養容器がかなり相性が良いと思われます。

茶漉し

もはや超撥水のデモンストレーションで定番と言われる茶漉しです。
コート後は「茶漉せず」になります。
実はこれは平滑面に比べると易しい技術なのですが、初めて見る方にはインパクトがあるようです。

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用途

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【1】 用途一覧

超撥水コーティング剤の用途は主として水を弾き付着させないことです。その結果、基材の腐食防止や藻・カビなどの発生防止などにも効果があります。また、水に類するものとして雪や氷を付着させない作用が期待出来ます。右のボタンで作用と用途例の組み合わせ表が開きます。
以下にいくつかの用途をピックアップして紹介します。

【2】 屋根:撥雪

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【2-1】 「撥雪」とは

「撥雪」は辞書にまだない言葉かも知れません。技術の発達によって生まれた新しい用語です。 STAOFJAPANでは水に対して「撥水」があるように雪に対して「表面に雪を留めない性質」を「撥雪」と表現したいと思います。
根幹にあるのは超撥水技術です。
屋根の積雪対策として撥水系、親水系の塗料は上市されていますが、まだ十分に普及してるとは言えないようです。
撥水系、親水系の塗料と超撥水塗料の違いを簡単に言えば、撥水系、親水系塗料の表面は固体ですが、超撥水塗料の表面はあらかた気体です。だから雪が付着しにくいのです。

【2-2】 街における雪害

雪害にもいろいろなケースがあります。首相官邸ホームページでは以下のように分類されています。

  • 除雪中の事故
  • 車による雪道での事故
  • 歩行者の雪道での事故
  • 雪のレジャーの事故
  • 雪崩に因る事故

本件の撥雪塗料(=超撥水コーティング剤)の対象となるのは主として上記の「除雪中の事故」ですが、それもさらに以下のように区分されます。

  • 屋根からの転落
  • 屋根からの落雪
  • 水路等への転落
  • 除雪機関係の事故
  • 除雪作業中に心筋梗塞などを発症

この小区分において主として「屋根からの転落」と「屋根からの落雪」が撥雪塗料の対策対象の雪害となります。 屋根に雪がうず高く積雪することがなければこの2件の事故は軽減出来ると考えられるからです。
ちなみに令和3年版の消防白書によると

令和2年 11 月から令和3年4月までの雪害による人的被害は、死者 110 人(前年9人)、重傷者 675人(同 71 人)及び軽傷者 1,030 人(同 142 人)、住家被害は、全壊 17 棟(同0棟)、半壊 21 棟(同0棟)、一部破損 1,235 棟(同2棟)、床上浸水5棟(同0棟)、床下浸水 34 棟(同1棟)
令和2年 11 月からの大雪では、3年ぶりに死者数が 100 人を上回り 110 人となり、そのうち屋根の雪下ろし等の除雪作業中の死者数が 95 人と大半を占めることとなった。

と深刻な自然災害であることが伺えます。
実はこの人的被害数は同年の風水害による人的被害数を上回っています。
おそらくですが、消防に届けられていないようなケガ数はもっと多いのではないでしょうか。

また、屋根の除雪以外にも雪害はあります。いくつか挙げます。

  • LED信号機に着雪し信号の色が読み取れない
  • 道路標識に着雪し標識が読めない
  • ビニルハウスに積雪し、雪の重みで損壊して農作物に被害が出る
  • 送電線に着雪・着氷しその荷重で送電線が垂れ下がったり切れる

これらも雪害の一つなのではないでしょうか。
上記の内、送電線のケースだけは「過冷却水」という別の現象によって引き起こされることがあるので対応が異なるかも知れませんが、それ以外は超撥水コーティング剤が撥雪塗料として役に立つ可能性があります。

【2-3】 乾雪対応

雪とはざっくり言えば氷と水と空気の混合物です。しかし、その混合比率や性状、降雪量などによって10数種類もの分類:呼び名があります。
ここでは大きく乾雪と湿雪に分け、まずは乾雪についてお話します。
乾雪は含まれる水分が少なく手触りもサラッとしています。ほぼ固体と見なす事が出来ます。しかし比重は小さく、風が吹けば飛びます。石のような密度の高い固体とは挙動が違います。このような軽い固体が超撥水コートの空気層の上に乘ればどうなるか?エアホッケーのように摩擦の極小状態でコロコロ転がります(あるいは滑ります)。
もちろん超撥水コートを施した素材に雪の粒ほどの凹凸があればそこに乾雪は引っ掛かりますが、単に引っ掛かっているだけで付着ではありません。

右の写真は山形の新庄で撮影しました。夜間に窓の庇に超撥水コートしたガラスを置いておいたところ、翌朝ガラス上には雪はありませんでした。
雪質は乾雪で粉雪あるいは玉雪に分類されると思います。庇の角度は5度以下です。

2枚目の写真はスレート板を使用しています。 3枚並んだスレート板は左から超撥水コート、超親水コート、コート無となっています。
撮影場所は札幌で雪質は乾雪です。スレート板の角度は50度くらい立ててます。
スレート板の表面には多少凹凸がありますので、少し雪が引っ掛かった部分がありますが、超撥水コートは撥雪効果があると言っても良いかと思います。
このように条件が整えば超撥水表面は乾雪に対して撥雪効果を示します。

右の動画は参考としてかき氷を用いています。
超撥水コートされたガラスはほぼ室温です。通常ならばかき氷はガラスに接すると接触面が水になり、付着力が生じますが、超撥水コートは断熱効果もあるのでかき氷は溶解することなく下に滑り落ちます。

【2-4】 湿雪対応

乾雪よりも厄介なのが湿雪です。湿雪は乾雪よりも含有水分量が多く、べったりとした雪質です。
その挙動は固体よりも粘度の高い液体に近く、付着力が大きいのです。 したがって、湿雪(=粘度の高い液体)は球形に変形しない為、超撥水コートの上を転がりません。ゆっくりと滑るか留まります。
しかし、雪質が乾雪だけという地域はあるのでしょうか? 例えば雪のシーズンの始まりは気温が比較的高く湿雪であったり、夜間は乾雪でも日中は湿雪になったりするのが普通ではないかと思います。

着雪減少

そこで板を垂直に置き乾雪・湿雪を横から与えて付着量を調べました。
乾雪の場合はほとんど着雪が無く問題ありません。 しかし湿雪は着雪し、ある程度の付着量になると基材から剥離します。そして再び着雪が始まるという現象を繰り返します。
その結果を右に示します。風速が大きいと着雪量はかなり増えます。風の圧力が堆積した雪の剥離を妨げるのかも知れません。
結果から超撥水コーティングは着雪量の減少に効果がありそうです。また、接触角は高い方が効果的であり、もしかすると170度以上の接触角になればかなりの効果が見られるのかも知れません。

接触角 湿雪付着量(相対値)
風速 5m/sec 風速 10m/sec
100度 60 140
140度 35 140
163度 25 40
含油構造

湿雪についてはSTAOFJAPANは超撥水だけが対策になるとは考えていません。
ヒントは雪掻きのスコップにシリコーンをスプレーすると雪が付着しにくくなり作業性が向上するという話でした。
つまり油の上の雪は滑り易いのです。液体は固体よりも表面張力が小さいため、当然と言えば当然なのですが。
しかし、この方法ではすぐにシリコーンオイルは失われ、再びスコップに着雪するようになってしまいます。


そこでSTAOFJAPANが考えた方法は、屋根材にまず超撥水コートを塗布し、その上から不揮発性の油を塗布する方法です。不揮発性の油の候補はまだ決定されておらず乾性油・不乾性油のどちらが適するかもデータ不足です。
この方法ならば油は超撥水コートのナノ多孔質内部に吸収・維持され、容易には流れ出さなくなります。 そして湿雪は油の上に乘る形になり、液体ー液体接触となるため非常に滑り易くなります。 下地となる超撥水コートを含めて2度塗布を行うという手間はかかりますが、雪の質を問わずに屋根上の雪の堆積を防止する効果があります。
翌年からは油を塗布するだけで簡単に施工出来ます。 また、油がナノ多孔質を埋めてくれるので、超撥水コートだけではやや白みがかった塗装面がクリアな透明感を持つようになります。 油が揮発したり流出すると再び白っぽくなりますので、それをサインに再び油塗装だけを行えば良いというメリットもあります。
油を保持するのに最適なナノ構造を形成する超撥水コーティング剤がベースになるSTAOFJAPANならではの発想と言えます。

【2-5】 本案件で求められる材料仕様

超撥水をベースにした撥雪、それによる雪害対策は今まで例のない新しい試みです。従って業界標準のようなものはまだありません。
STAOFJAPANでは独自判断で基準を設定していますが、簡単なものではありません。

  • 水接触角160度以上の超撥水性があること

    160度以下の接触角では雨天時に雨滴が残ることがあり、超撥水コート表面を汚します。 その結果として超撥水性が損なわれます。

  • 施工が簡単で安全であること

    屋根上の作業は危険なので塗布作業は1回で済ませられる必要があります。
    最も手軽な塗布方法はスプレーコートです。スプレーコートに対応した組成が必要です。 また、溶剤は水系あるいはエタノールなど人体・環境に優しい必要があります。

  • 様々な素材に適応性があること

    コロニアル、和瓦、塗装されたトタンなど多様な屋根素材に適応出来る必要があります。 場合によってはビニル・ポリカーボネートなどにも適応が望まれます。

  • 透明性があること

    塗った結果屋根の色が激しく変わるようでは問題です。なるべく素材の色をそのまま見せる必要があります。
    クリアな透明性が難しくとも下地が見えるような半透明性は必要です。

  • 後作業の無いこと

    塗布後、加熱やUV照射などの作業を必要とせず自然放置で短時間に超撥水性が発現する必要があります。

  • 低価格であること

    望ましくは1平方メートル当たりの材料費が500円以下を目標とする必要があります。

【3】 通信用アンテナ:防水滴

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【3-1】 背景

電波は水によって減衰します。減衰レベルは波長に依存します。
右の図は大気中の水蒸気や酸素による減衰を示します。数GHz以上に周波数が上がると水蒸気による減衰が目立つようになり、更に周波数が上がると減衰レベルが大きくなる傾向があります。特に22GHzあたりで一度減衰ピークが現れています。更に周波数が上がり60GHz近辺になると酸素による減衰も大きく現れます。


水蒸気でも減衰が発生しますから、水膜による減衰は更に大きくなります。何といっても水分子の密度が違いますし、水膜表面の反射も発生します。
降雨時の電波減衰に関してはいろいろな報告があります。 シミュレーションでは3mm/hrの降雨時に減衰レベルが約3dB(約半分)、13mm/hrの降雨時に減衰レベルが約10dB(約10分の1)となりました。
降雨時におけるアンテナの電波減衰についてはNTT-ATさんのサイトにより詳しく書かれているのでご参考にお勧めします。

水膜減衰実験

では実際の減衰を検証してみます。 右の写真は検証用装置です。左のドラムの中に受信機が設置されており、右の発信器からの信号を受けます。 ドラムはアンテナのケースをイメージしています。

ドラムに水を掛けて受信した信号レベルを透波率(%)で測定した結果が右図です。
「无水」とは無水のことでドラム表面に水を与えていない比較例です。
水膜1-5の水膜レベルはそれぞれ以下のようになります。
また、"100%"はカバーの無い状態での受信強度です。波長により100%を超える値が得られていますが理由は定かではありません。

  • 水膜1
    水を掛けた後水滴を拭き取り、表面に水滴が付いていない状態で測定
  • 水膜2
    表面に水滴が残って付いている状態で測定
  • 水膜3
    少量の水を掛けながら測定
  • 水膜4
    中程度の水を掛けながら測定
  • 水膜5
    大量の水を掛けながら測定

あまり定量的な表現でなく申し訳ありませんが、高周波領域においてはある程度の降雨量で透波率は10%近くまで落ち込むことが分かります。
また水滴が付いているだけでも少量の雨と同程度の減衰が起きることが分かります。つまり降雨後も水滴が付いているとある程度減衰状態が続くという事です。
この試験では最大周波数は18GHzでしたが、日本の5Gミリ波規格の28GHzを外挿した場合、透波率は9%になります。信号強度が約10分の1になるという事です。

5G通信

商用サービスが開始された5G(第5世代移動通信システム)ですが、日本で利用される周波数帯域はSub6帯の3.7GHz帯と4.5GHz帯、ミリ波帯の28GHz帯です。
本件で懸念するのはミリ波帯です。減衰ピークの22GHzは避けていますが、28GHzはまだ水による減衰を考える必要がある帯域です。 屋外アンテナの表面に降雨中、降雨後に水膜或いは水滴が付いていると信号到達範囲が数分の1になる可能性があります。

【3-2】 効果

右に結果を示しますが、超撥水コーティングの効果は顕著です。
掛けられた水量の強度に関係なくほぼ乾燥時の透波率と変わらない数値を得ています。ちなみに"100%"は上記「水膜減衰実験」同様カバーを付けない状態での受信強度です。
18GHzまでの測定値ですが、28GHzにおいても超撥水コーティングの有無による差があろうことは想像出来ます。

【4】 身の回り品:防水滴

雑貨に塗って超撥水を楽しんでみましょう。
大事ではないもの、というと過言ですが、例えば新聞紙、古くなった靴、木片とか金属片とか石とか。 茶漉しなどは100円ショップでも売ってますし、効果が分かりやすいのでお勧めです。
調理用スレート板も100円ショップで売っています。ただし、一度コートしたら調理用には使用しないで下さい。
布製の傘もお勧めです。目の粗い日傘でも使えます。 サンプル動画 に紹介しています。
その他、身近な物でいろいろ試してみましょう。

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使用方法

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【1】 保管

直射日光を避け、容器を密閉し換気の良い冷暗所に保管して下さい。

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【2】 塗布前作業

風が強い状態や基材表面が熱い状態では塗布を控えて下さい。
マスクやメガネ、保護手袋など保護具を装着して下さい。

塗布する素材の表面をきれいにしてください。
洗浄する際に界面活性剤を用いた場合は水で十分に洗い流して下さい。

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【3】 塗布作業

スプレーボトルはよく振ってからご使用下さい。
スプレーノズルと素材との距離は10~15センチが適当です。
スプレーボトルを滑らかに左右に動かしながらスプレーすると薄く均一な塗膜が得られます。
膜厚が薄くても超撥水は機能します。しかし見た目には塗膜が均一に出来ているか分かり難い為、つい厚塗りしがちです。厚塗りしても性能に問題はありませんが、見た目の変化(白くなります)とコストが変わります。

スプレー以外にもスポンジローラーも使用出来ます。


Phobicon80,Phobicon87は塗布のみで十分ですが、Phobicon60、Phobicon62については塗布後に刷毛などで塗布面をブラッシングするとよりピンホールの無い高品位な塗膜が得られます。ブラッシングは塗膜が乾く前でも乾いた後でも構いません。

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【4】 塗布後

Phobicon60、Phobicon62は乾燥すれば直ちに超撥水性が得られます。

Phobicon80、Phobicon87の場合はスプレー後は2時間ほどお待ち頂ければ自然に超撥水化します。(気候が良ければ30分~1時間で超撥水になることもありますが念の為に)
十分に硬化するまでは塗膜強度が弱いため塗布後24時間は触ったりしないで下さい。

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超撥水学

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【1】 超撥水に関連する理論
【1-1】 接触角に関する理論
接触角に関しては以下の3つの理論が有名です。
Youngの式

液体の接触角を決めている因子はあくまでも液体と固体それぞれの表面張力であるという理論です。最もポピュラーな理論です。

この式に基づき表面が平滑な場合の各種化学的官能基の水接触角を求めたのが右の表です。

表 各種末端官能基と接触角
末端官能基 接触角
-OH 5度
-CH3 50-60度
-CF3 90-120度
Wenzelの式

表面が粗いと接触角が変わるという理論です。直感的には分かり易いですが、穴がある理論です。
例えば、表面が粗いことで実表面積が投影表面積(図では「見かけの表面積」と表現しています)の数10%大きい値になることはあり得ることですが、表面が平滑な時の接触角が小さい場合ではどうでしょう。
接触角が0.1ラジアン(5.7度)という超親水状態は良く磨いたガラスでは珍しいことではありません。この場合cosθは0.995と極めて1に近い数値です。これに対してrの値が1より十分に大きけれればcosΦは1より大きな数字になります。ご存じのように三角関数ではcosΦの値は1≧cosΦ≧-1の範囲でなければいけませんのでこの式は破綻してしまいます。
感覚的に言えば、表面が粗いと接触角90度を超える撥水性ではより撥水性に、接触角90度未満ではより低接触角に、更に接触角が小さい親水性はより親水性になる、という事でしょう。
しかし、この式にはもっと予想外の結論が存在します。それはr(真の表面積/投影表面積)の値が数10という大きな数字になるときに起こります。
その話の前にもうひとつのCassie-Baxterの式について説明しておきます。


Cassie-Baxterの式

本来の式は接触角θ1の個体と接触角θ2の個体が混在した表面に対する式ですが、本件では接触角θ2の固体の代わりに空気を想定して式を少し変更しています。固体の接触角はθxとしています。
この図の状態は空気部分の開口面積が小さい場合であり、開口面積が十分に大きければ水は空気部分に浸透して全面を濡らしてしまうため式が成立しなくなります。


つまり上述のWenzelの式において固体表面の凹凸が極めて微細になった場合と考えても同じです。
右図のようなイメージです。

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開口部の径が水のクラスターサイズよりも小さければ凹凸構造に水は浸透出来ません。水のクラスターサイズは正確ではありませんが20nm以下と思われます。 さて、このような微細構造が形成出来る場合、驚くべき結果が得られます。それは固体表面が親水性であっても凹凸構造の効果で超撥水性が発現出来るという事です。
ここで、平滑な固体表面に水のクラスターサイズよりも小さいナノホールが開いていると仮定し、Cassie-Baxterの式に戻り、表面に見られる固体の面積比:fxと水接触角の関係をグラフで示すとこのようになります。
フッ素系表面はーCF3で覆われた場合の接触角:110度、撥水性表面はーCH3で覆われた場合の接触角:60度、親水性表面はーOHで覆われた場合の接触角:5度を基にシミュレートしています。
ナノホールが増加するにつれ接触角が増大し、ナノホールが十分に多いと親水性表面であっても接触角150度を超える超撥水が実現可能であることを示しています。
しかし、フッ素系表面においても
 固体 : 空気 = 1 : 8 (面積比) において接触角150度
 固体 : 空気 = 1 : 9 (面積比) において接触角160度br>  固体 : 空気 = 1 : 19 (面積比) において接触角165度
 固体 : 空気 = 1 : 49 (面積比) において接触角170℃
という計算結果になることから容易な技術ではないことが分かります。

【1-2】 表面張力

液体を弾く為にはまず液体の表面張力を知ることが大事です。

水の表面張力

水の表面張力は液体の中でも大きい部類です。分子内の分極が大きい為分子間に相互に引き合う力が働く為です。
その表面張力は温度に依存し、右図のように水温が上がれば表面張力は小さくなります。
「お湯で洗うと汚れが落ちやすい」という経験ははあると思います。この現象は複数の作用が働いているのですが、表面張力が小さくなるという作用も含まれています。水の表面張力が下がれば汚れと基材の間に水が入りやすくなるのです。
撥水性の見地で言えば温水、熱水ほど撥水しにくくなります。

塩水の表面張力

塩水は金属を腐食させることから浸透し易い=表面張力が小さいと思われがちですが、逆です。
20℃の水の表面張力は72.75 mN/m ですが、同じ20℃の10wt%塩水の表面張力は75.5 mN/m と大きな値になります。
塩水に対して撥水化することは水に対して撥水化するよりも易しいのです。

エタノールなど有機溶剤の表面張力

エタノールなどの有機溶剤の表面張力は概して20-40dyne/cmの値です。

表 有機溶剤の表面張力
品種 表面張力 (dyne/cm)
(20℃)
72.8
エタノール 22.6
ジエチレングリコール 45.2
ベンゼン 28.9
MEK 24.5
トルエン 28.4
酢酸エチル 24.0
酢酸 27.7
食用油などの表面張力

油脂類の表面張力も概して30-40dyne/cmの値です。

表 油脂類の表面張力
品種 表面張力 (dyne/cm)
(20℃)
大豆油 35.0
落花生油 35.5
オリーブ油 35.8
ごま油 31.8

上記以外にも水に界面活性剤を加えれば表面張力は下がります。
つまり身の回りにある液体の中で水は最も表面張力の高い液体なのです。
このことから撥水は撥油よりも容易であるが親水は親油よりも難しい技術だと分かります。

【1-3】 ナノ構造の形成

前述したように120度を超える水接触角を得るには表面のナノホールが必要です。
ナノホールの径は10nm~20nmとされる水のクラスターサイズよりも小さいことが必要です。大きければ水は毛細管現象によって浸透します。(これを応用した超親水性被膜の形成技術もあります。)
10nmといってもピンときません。仮に10nmのサイズを1円玉(2cm)の大きさに拡大すれば200万倍になりますので、1円玉は40kmの大きさになります。ほぼマラソンの距離ですね。
ではどうすればこのような超微細ナノ構造を形成出来るのでしょうか?

エッチングとスタッキング

大雑把な手法を紹介しますと、ナノホールの無い面に何らかの作用で孔を開けるエッチング法とナノ粒子などを用いてナノ構造を構築するスタッキング法があります。※この名称は筆者が勝手に着けているだけであり業界用語ではないのでご注意下さい。
エッチングはさらに化学的作用とフェムト秒レーザーや電子線などを用いる物理的手法があります。スタッキングにはPTFEとニッケルの共析等が知られています。
何だかよく分からないが高度な技術のようだ、と思われる方も多いでしょう。筆者も上手く説明出来ません。ただ言えるのは安価な大量生産には向いているとは言えないという事です。
そもそもエッチング法とスタッキング法には大きな工程の差があります。
エッチング法では先ずエッチングされる被エッチング層を設け、次に何かしらの方法でエッチングを行うため2段階の工程が必須です。一方でスタッキング法では1工程で仕上げることも可能です。
スタッキング法の一例を紹介すると、球を積み重ねるようなイメージです。ビー玉やパチンコ玉を積み重ねておくと玉同士の間に隙間があるのが分かります。この隙間をナノホールとして利用しているのです。
完全な球形の玉をぎっしり詰めても実は充填率は74%程度であり、約1/4の体積は空気です。この比率は玉の大きさとは関係なく一定の数値です。
しかし玉の大きさを小さくしていくと隙間のサイズも小さくなり、やがて水のクラスターサイズよりも小さくなります。この時点で超撥水膜が達成出来ます。
極めてシンプルな原理です。

このようにして形成されるナノ構造には以下のような長所と短所があります。

長所

  • スプレーやロールなど汎用の塗布方法を用いる事が出来ます。
  • 理論的には1粒子分の膜厚で機能します。あくまで理論です。

短所

  • 塗膜の内部も多孔質になってしまい塗膜強度を落とします。機能的には塗膜表面近傍がナノ多孔質であれば十分ですので内部は緻密な方が強度が出ます。。
  • スプレーなどではピンホールや粒子のブリッジが起こり易く均一な膜が難しくなります。
市販品のナノホール形成技術

市販されている超撥水コート剤は多くありません。そして筆者が把握している限りではほとんどがナノ粒子を用いてナノホールを形成しています。
しかしナノ粒子だけでは結合能力が無い為に塗膜を長時間維持出来ません。むしろ同じ電荷に帯電し易いので反発し合うこともあります。
その為、バインダー樹脂を用いるのですが、バインダー樹脂が過剰だと粒子間の空隙が樹脂で埋められ超撥水化しなくなってしまいます。
そこで、バインダー樹脂量は必要最小限に抑え、強度が足りない分は凹凸のある下地コートを設けて、その凹凸により粒子を保護しようという考え方です。
右図はそのイメージです。
ベースコートが自動的に程良い凹凸を作れればベストですが、そうで無くともベースコートを紙やすりなどで擦って凹凸を設ければ凹部のナノ粒子は保持されやすくなります。

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図 2層構造の超撥水膜
【2】 STAOFJAPANの技術
【2-1】 構造

STAOFJAPANは価格と生産性の面からスタッキング法を採用しています。
右の写真は使用しているナノ粒子のSEM(電子顕微鏡)画像です。
ナノ粒子の径はおおよそ10-20nmです。

【2-2】 性能
膜厚と接触角

右の表からも分かるようにSTAOFJAPANの超撥水コーティング剤は膜厚が1umに近い状態で既に接触角は飽和値を示し、これ以上膜厚が厚くしても接触角が変わらない状態になります。
通常の塗膜に比べても十分に薄い膜厚です。

表 膜厚と接触角
膜厚(um) 接触角 (度)
0.1 120
0.4 162
0.8 163

膜厚が薄いとそれに応じて表面も平滑になります。
右にAFMとSEMの観察結果を示しますが、非常に平坦な表面です。

透明度

膜厚が薄い為、光透過率が測定出来ます。本サンプルでは74%の透光率でした。ガラスの透光率が約90%ですので実質84%くらいでしょうか。
ガラスに塗布した結果を右に表示します。一番右が写真の上に塗布済みガラスを乗せた状態ですが、やや曇って見えるのがお分かりいただけると思います。
完全にクリアなガラスのような光透過性ではありませんが市販の超撥水コーティング剤が白色不透明であることに比べると大きな違いがあると思います。
一方、不透明でもありませんので、下地の変色や汚れを隠せないこともあります。使用前の下地のクリーニングは十分に行う必要があります。
超撥水コーティング剤においてクリアな透明性があることは高等技術であり、まだまだ改良の余地があります。

ただ、もし他の超撥水コーティングを見たことがある人ならばこんなに透明度が高い超撥水コートが可能なのかと思われるかも知れません。
右が本ガラスの超撥水性の動画です。

右の動画ではシャーレにPhobicon87を塗布しています。かなり透明性が高いことが分かります。
推定ですがPhobicon87の光透過率は80%を超えていると思います。

上記以外のこだわり

STAOFJAPANの超撥水コーティング剤は上記以外にもいくつかのこだわりを持って設計されています。

  • 溶剤はアルコール類しか用いない。
    アルコール類も有機溶剤ですが、特にエタノールは比較的人体にダメージが少ない為に優先して使用しています。

  • 硬化型だがなるべく加熱や紫外線などの硬化方法を用いない。
    加熱硬化に装置を要するのでは屋外の一般的な環境では制約が大きくなります。STAOFJAPANの超撥水コーティング剤は室温で放置しても数時間で硬化します。ただし加熱することにより硬化時間は短縮しますので何らかの方法で加熱出来れば助けになります。

  • 必ずしも下地層を必要としない。
    下地がないガラスのような平滑面に塗布しても超撥水が発現出来るよう設計しています。 下地を否定するのではなく、下地があっても構いません。その方が擦り強度が向上します。
    しかし場合によっては下地層を設けることが難しいこともありますし、再塗装の際に下地層の剥離と言う手間が掛かることもあります。
    従って下地層が無くても超撥水を発現出来るよう設計することは重要です。

【3】 「超撥水」に関する注意
「超撥水」という言葉を安易に使いすぎ

学術的には「超撥水」とは水接触角が150度以上を意味します。勿論、接触角が100度なのに「超撥水」と謳っても罰則はありません。
しかし、「超撥水」でネット検索した結果ほとんどが100度前後の「撥水」材料でした。

織物や起毛などに対して

織物や起毛などに撥水コートを施して超撥水化させる「超撥水化」コートは市場でも見られます。このような織物・起毛類に超撥水コートではなく撥水コートをお勧めします。理由は色合いです。超撥水コートは概して白っぽい曇を生じますので下地本来の色を損ないがちです。

難しいのは霧雨

バケツなどで水を大量に超撥水コート面にかける動画が動画サイトで観られます。しかし実は大きなボリュームで与えられた水を撥水することは簡単なんです。大きな水滴が別の大きな水滴と結合しながらコート表面から容易に流れ去ります。
難しいのは小雨・霧雨のように細かい水滴の場合です。
水滴が小さい場合落下させるための重力モーメントが小さく、また空気との摩擦で帯電していればより排除しにくくなります。

擦り強度

微細凹凸構造を形成している超撥水コート材は擦り強度が緻密な構造の材料に比べると擦り強度が弱くなります。
その為、擦り強度が求められる場合には基材に凹凸を設けたり、テクスタイルのような構造体に塗布したり、あるいはベース構造で大きな凹凸を設けて超撥水層を保護するような構造が必要になります。

油や有機溶剤に対して

超撥水コート材と言っても必ずしも超撥油性ではありません。これは微細凹凸構造のサイズが油のような表面張力の小さい液体に対して十分に小さくない場合、液体が浸み込むからです。
油以外にアルコールなどの有機溶剤や石鹸水なども表面張力が小さい為、コート表面は濡れます。
例えば実験室において真空紫外フッ素レーザーによるエッチングで作られた小さなサイズのサンプルは優れた撥油性を示すことがありますが、屋外使用で安価かつ面積処理速度の速い汎用コーティングにとって「10nm以上の窪みを全く作らない」ということはかなり困難な技術です。

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FAQ

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【1】 性能について

他の超撥水と何が違うの?
実は市販の「超撥水」はほとんどが「撥水」です。
技術的にはガラスのような平板に塗布しても水接触角が150度以上でないと超撥水とは称しないのですが、市販品はほとんどが110度未満です。
Phobicon 87 はガラスに塗布しても165度の接触角があります。水滴は塗布面に留まる事が出来ず写真になりません。
ただ、市場には真の超撥水剤もあります。NTT-AT社のHIRECやRust Oleum社のNever Wetなどが有名です。
WNはそれらの材料に比べて以下のようなこだわりを持っています。
・ 溶剤は比較的安全なエタノールかIPAしか使用しない。
・ 下地塗工を必要としない。(下地があっても可)
・ 数時間の自然硬化で性能を発現させたい。
・ 薄膜でなるべく透明度を上げたい。
・ 再塗装が容易
・ 面積価格を通常のペイント類と同程度かそれ以下にしたい。
塗膜は透明ですか?
薄く曇ったような外観です。
超撥水学 【2】 STAOFJAPANの技術 【2-2】 性能 にガラスに塗布した結果を表示しています。一番右が写真の上に塗布済みガラスを乗せた状態ですが、やや曇って見えるのがお分かりいただけると思います。
一方、不透明でもありませんので、下地の変色や汚れを隠すことも難しいです。使用前の下地のクリーニングは十分に行って下さい。
どれくらいの期間性能が持続しますか?
使用環境に因ります。
Phobicon87の場合、真の表面積は87m2/m2あります。従って外部環境により汚染されやすいと考えられます。
水に対しては強い撥水性を示しますが、油ミストは付着しますし、PM2.5やPM0.1といった超微小粒子が静電気で付着することもあります。
そういったコンタミが表面に付着することによって超撥水性は徐々に劣化します。
一方、水や食塩水に浸漬した状態では表面汚染がほとんど無いので一年間浸漬しても性能が変わらないことを確認しています。
性能が落ちた時はどうしますか?
汚れを除去するか再塗装になります。
超撥水コート剤の表面は汚れやすいので、復活させるためのクリーニング剤も用意してあります。 それでも完全復活は難しい場合もあります。
機械的な摩耗を受けた場合は再塗装になります。Phobicon87では前塗膜を剥がす必要は無く、そのまま重ね塗りが出来ます。
保存は出来ますかか?
未使用ならば製造後2年まで使えます。
長期間使用していない場合は使用前によく攪拌して下さい。スプレー缶の場合は良く振って下さい。
使用途中の状態で保存した場合はノズル部分が固まることがあります。申し訳ありませんが、その場合は再使用が出来なくなりますのでご注意下さい。
【2】 用途について

塗ってはいけないものってありますか?
以下の用途には使用しないで下さい。
1) 人体や動植物
有害物質は含みませんがすべてのコート材は呼吸器系などにダメージを与える可能性があります。
2) 食べ物、食器や調理器具など
毒物ではありませんが、消化器系などにダメージを与える可能性があります。
3) よく人の手が触れる場所や擦れが生じやすい場所
超撥水を発現するナノ多孔質構造は上からの圧力には強くても横から推すような力に対しては脆いです。
4) 色合いや透明度・光沢を気にするもの
ガラス類に使用すると若干曇って見えます。デモビデオではガラスにも塗りましたが性能確認のためですので窓ガラスなどには使用をお控え下さい。
(※ 窓ガラス類には別製品の「超親水コート材」が適するケースが多いです。)
衣服や帽子、靴、バッグなどに使用すると若干白っぽくなります。本来の色合いを損ないたくない場合は使用をお控え下さい。
車のボディーなどに使用すると光沢が損なわれます。
5) 油や石鹸水などのかかる場所
超撥水効果は水に対して働きます。そのため水よりも表面張力の低い油や石鹸水は苦手です。 それらはナノ多孔質内部に入り込み空気孔を塞ぐため、超撥水を損ないます。
洗面台周りやキッチン周りは好ましくない場所です。
なお、高アルコール度数のお酒も有機溶剤みたいなものなので苦手です(笑)。
衣服にもコート出来ますか?
技術的には可能ですがあまりお勧めしません。
衣服などに塗布すると見た目がやや白くなります。また、一度洗濯すると超撥水性が低下します。その為、洗濯頻度の低い傘(日傘も含みます)や帽子は比較的お勧めしますが靴やバッグにもお勧めしません。
そういった用途は透明な撥水コートでも効果があると思います。ガラスに塗布して場合の接触角が100度前後でもテキスタイルに塗布すれば120度以上になることがあります。
【3】 施工について

注意点は何ですか?
通常の溶剤系塗料と同じです。
溶剤系ですので火気や作業環境などには気を使いますが特別な注意はありません。
スプレーボトルは良く振ってから使用して下さい。
スプレー以外にもディップ、ロール、ナイフコートなど様々な塗布方法が選べます。
1Lの塗料でどれくらいの面積に塗れますか?
平滑な基材なら1%濃度品で8-10m2に塗れます。
コンクリートや木材、繊維系など浸み込むような用途では使用量が増えます。
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